最後の夜

2022年03月21日 23:19

2022年3月21日(火)春分の日、服部ビル401号室は空っぽになった。
今夜寝る布団と瓶の底にわずかに残ったお酒があるだけだ。
6年前、入居の際、不動産屋さんから、「年齢的にギリギリですね」と言われたが、
こちらはまだまだこれからと思っていた。
実際、この部屋で3冊の本を書き、幾多の雑誌に寄稿文も書いた。
昨年12月、71才を迎えて、次の10年はあれをやりたいこれをやりたいと構想を練ったのもこの部屋だ。
ところがなんと、自分だけでは回らないのが人生。
にっちもさっちもいかないところにいた。
気づいてみると、これまでは、家族の意向も聞かず、よくも自分のやりたいことだけをやってきたものだと思う。
義母の介護を機に、はっと気が付いた。
妻が急に老けていたのだ。
介護疲れもあろうが、とても寂しがるようになったのだ。
妻の父は91才でなくなった。
義母は今94才。
次の20年はそばにいてあげないと何のための夫婦と思ったのである。

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